東京地方裁判所 平成10年(ワ)5460号 判決
原告 有限会社デザインアンドデコレーション
右代表者代表取締役 横森浩美
右訴訟代理人弁護士 北村行夫
右訴訟復代理人弁護士 前田裕司
同 大江修子
被告 臼井健夫
右訴訟代理人弁護士 加藤博史
主文
一 原告の主位的請求を棄却する。
二 被告は、原告に対し、金七〇万円及びこれに対する平成一一年九月一七日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の予備的請求を棄却する。
四 訴訟費用は、これを四分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
五 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 主位的請求
被告は、原告に対し、金三〇二万七五〇〇円及びこれに対する平成一〇年三月二二日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 予備的請求
被告は、原告に対し、金二三八万八七五〇円及びこれに対する平成一一年九月一七日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、デザイン・設計等を目的とする有限会社である原告が、被告の部屋のデザイン設計等をなしたとして、被告に対し、主位的に被告との間の請負契約の債務不履行に基づく損害賠償を、予備的に商法五一二条に基づく報酬請求を求めた事案である。
二 判断の前提となる事実(末尾に証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない。)
1 原告は、平成七年九月二二日、住宅、事務所、店舗等の内装、外装及びインテリアに関する企画、デザイン、設計、並びに施工等を目的として、設立登記された有限会社である。代表取締役は横森浩美(以下「浩美」という。)であり、同人の夫である横森祐二(以下「祐二」という。)は取締役で、専務取締役とされていた。原告会社の本店所在地は、浩美及び祐二の自宅である(乙三、甲一八、二一)。
2 被告は、東京都豊島区千川に住居を持つ医師である。被告の妻は臼井典子(以下「典子」という。)、被告の父は臼井亮平(以下「亮平」という。)である。亮平は、昭和五七年ころ栃木県大田原市に医療法人亮仁会那須中央病院(以下「那須中央病院」という。)を設立し、以後右病院の理事長兼院長であり、被告は都内近郊の病院で整形外科医として勤務しながら那須の病院でも仕事をしていた(乙一)。
3 平成八年二月二三日ころ、典子は友人である訴外オーエン靖子の自宅を訪ね自宅のカーテンの模様替えについて話をしていた際、右靖子と同じマンションに住む友人で輸入物のカーテンに詳しい人物として浩美を紹介され、同日同人宅を訪問して話をした。その際、典子は浩美に対し、カーテンの模様替えの話の他、豊島区の自宅の模様替えをしたいと思っていること、義父が那須の病院をやっており今度その病院の増築をするがそこに被告の部屋を造るが被告はその部屋の内装についてどうしようかと思っているようだというようなことを話した。
また、典子は自己の名刺(甲二〇)を浩美に渡し、浩美も名刺を典子に渡して名刺の交換をした(甲二〇、乙一)。
4 同年三月一日ころ、浩美は典子に対し、「那須のご主人様邸」と題するファックスを送付した。右ファックスは、「このたびはプランニングのご依頼ありがどうございます。」とし、プランAをファックスすること、他にもいくつかプランがあるがAがいいと思い、まずこちらをファックスすること、いろいろ要望を聞かせて欲しいことが記載されている。右ファックスは、差出入は浩美本人名義であり、冒頭部分に英語で「デザインアンドデコレーション」、浩美の「ヨコモリ」という英語の署名の下に英語で「ロミー・エッチ・ヨコモリ、プレジデントアンドディレクター」、下段に英語で「デザインアンドデコレーション有限会社」の記載がある(甲九の一、一〇)。
5 同年三月一二日ころ、浩美は豊島区の典子及び被告の自宅を訪問し、前記3とほぼ同様の話をした。
6 同年三月一日から同年三月一二日までの間に、浩美は典子に対し、那須の病院の被告の自室についてのプランBないしHを送付ないし持参した(甲九の二ないし八)。
7 同年三月一二日被告は浩美から受け取った前記AないしHのプランを見てプランDが気にいり、同月一三日浩美に電話を架けて、プランDが気にいったこと、右プランを詳しく書いたものを送って欲しいことを伝えた。
8 同年三月一三日ころ、浩美は被告及び典子に対し、「那須ご主人様邸」と題するファックスを送付した。右ファックスには、今朝の電話について礼を述べ、プランDで早速進めさせていただくこと、作業にあたり必要な資料があるので施工の方へ直接連絡を取った方がいい場合もあると思われるので被告から先方へ私どもが設計させて頂く件をよろしく伝えて欲しいことが記載されている。右ファックスの体裁は、差出人が英語で「ロミー、エッチ・ヨコモリ、デザインアンドデコレーション有限会社」と記載されて、下段の記載の字体が大きくなっている他は前記4と同じである(甲一一)。
9 同年三月一九日ころ、浩美は被告及び典子に対し、「那須中央病院増築プロジェクト・臼井先生居室部分建築・インテリア計画書」と題する書面をファックスで送付した。右書面には、平面図、展開図、設備機器が記載された各書面が添付されており、その体裁は、下段に原告会社の名前が日本語で記載されている(甲一二)。
10 同年三月二六日ころ、浩美は典子に対し、「ご自宅の増改築の件」と題するファックスを送付した。右ファックスは、話を聞きながら作成したプランをいくつかファックスすること、マンションへの移居の件を含めて中長期的な計画、予定が費用の点から関わってくること、いろいろな点も含めて相談させて欲しい旨記載され、「増改築のマンションの移居のコスト比較」と題する文書及び図面四枚が添付されている。右ファックスの体裁は、前記8とほぼ同じである(甲一八、一九の一ないし四)。
11 同年四月五日ころ、那須の病院の施工業者である長谷川工業株式会社の担当者上野から浩美に対して、ファクスが送付された。右ファックスには、四月一一日建築平面図、四月一八日確認提出図院長先生に提出、四月二二日確認申請提出、六月一日着工予定である等工事の予定が記載されている(甲三)。
12 同年四月一二日ころ、浩美は被告及び典子に対し、「D&Dカウンセリング・サービス」「あなたのスタイルを探して」と題する文書三通及び「一般住宅用インテリアデザイン料金体系」と題する文書を宅急便で送付し、同月一三日ころ到達した。右宅急便の送付状は、浩美本人が依頼主となっている(甲一、二、二二)。
13 同年四月一四日ころ、典子は右カウンセリング・サービスと題する書面に必要事項を記載し、同年四月一六日ころ浩美に返送した(甲二二)。
14 同年四月一七日ころ、祐二は長谷川工業の担当者上野修一に対し、「スケジュールについて」と題するファックスを送付した。右ファックスには、前回送付して貰った工程に関して、窓、床材など調達に時間のかかる場合があるので窓据付、床暖房など概略の時期を教えて欲しいこと、床暖房以外の冷暖房についてどのような計画か、その他スケジュールに関して何かこちらが考慮すべきことがあれば連絡して欲しいことが記載されている。右ファックスの体裁は、祐二の署名の下に英語で同人の名前及び「シニアマネージングディレクター」と記載され、下段に英語で原告会社名が10よりさらに大きくなっている(甲四)。
15 同年四月一七日ころ、長谷川工業の担当者上野は祐二に対し、ファックスを送付した。右ファックスは、工程について連絡すること、四月二二日確認申請提出、四月二五日詳細図提出、五月一一日打ち合わせ、五月一八日見積書提出という工程の他、設計に関しては今月末に図面を送って欲しいこと、器機に関しては見積書作成の都合があるので一緒にお願いすることが記載されている(甲五) 。
16 同日ころ、浩美は被告及び典子に対し、「那須の件について」と題する書面及び「那須の件スケジュール」と題する書面をファックスで送付した。前者の書面は、前記13のカウンセリングへの協力について礼を述べ、今後のスケジュールについて長谷川工業の担当者上野とのコンタクトにより以下のとおり考えている旨記載され、後者の書面は、<1>四月下旬(二五日から二八日ころ)「臼井様とD&Dにてインテリアデザインの方向性及び使用内装材などについてお打ち合わせ。」→「四月下旬D&Dより長谷川Kへ図面(設備関連含む)提出」、<2>五月一八日「院長先生へ長谷川Kより見積提出」、<3>五月下旬(一九日から二六日ころ)「もう一度臼井様とD&Dで見積りを見ながらお打ち合わせ、またこの頃、家具・カーテンその他備品等についてもD&Dより臼井様へご提案とお見積りを提出」」、<4>五月下旬(二七日から三一日ころ)「臼井様とD&Dにてデザインについてほぼ合意。」と記載されている。これらはいずれも前記14の書面と同じ大きさのデザインアンドデコレーションの印刷がある書面である(甲一三の一及び二)。
17 同年四月二四日ころ、被告及び典子は、浩美の自宅であり原告会社の所在地である肩書住所のマンションを訪ね、浩美及び浩美の夫である祐二と面談した。被告は浩美及び祐二と会うのは初めてであり、典子は祐二と会うのは初めてであった。
右面談の際、祐二は、デザイン業務の報酬につき、業務に従事する時間で算出する方法と内装工事費用に一定の割合を掛けて算出する方法の二通りの方法があることを話し、これに対して被告は建築家の報酬と同じであるとの感想を述べた(以上につき、甲七、原告代表者、被告本人)。
18 同年五月一日ころ、典子は浩美に対し、亮平の氏名、同人の経営する那須中央病院の住所、亮平及び右病院の電話番号を記載した書面をファックスで送付した(甲六)。
19 同年五月三日ころ、浩美は前記那須中央病院の亮平宛に、宅急便で、「那須中央病院増築プロジェクト・臼井先生居室部分 建築・インテリア計画書」と題する書面を送付した(甲一四、一五)。
20 同年五月一三日ころ、被告は浩美に電話をかけ、亮平が報酬がいくらになるか知りたいので早く出して欲しいと言っている旨、亮平が那須に来て欲しい、業者にも会って欲しいと言っている旨話し、これに対して浩美は被告に対し、一週間後に報酬額を伝える旨、同年五月二三日に那須に行く旨答えた。
21 同年五月一六日ころ、祐二は長谷川工業の上野に対し、「臼井先生居室部分の天井高について」と題する書面をファックスで送付した。右書面は、臼井先生経由で頂いた右会社の図面に関して次のとおり連絡するとし、天井高の確認の他、前記14の事柄についての確認と返答を要請した(甲八)。
22 同年五月一六日ころ、被告は浩美に電話をかけ、報酬額を出して欲しいと言い、これに対して浩美は被告に対して、長谷川工業の見積もりが出ていないので報酬の計算ができないとして建築費がいくらになるかを聞いた。被告は、一旦電話を切った後再度浩美に電話をかけ、建築費の総予算は一〇〇〇万円である旨言った。
23 同年五月一八日ころ、被告は浩美に電話をかけ、仕事を今やめて欲しいと言った。
24 同日ころ、原告は那須中央病院宛の「ご請求書」と題する書面を送付した。右書面は「那須中央病院臼井先生居室部分 インテリアおよび建築プランニングに関する報酬料として(消費税込み)」と記載され、三〇万円を原告の銀行口座に振込みを依頼しているもので、同月二〇日ころ被告はこれを受領した(甲二七の一、二)。
三 争点
1 原告と被告との間で、被告居室のデザイン設計及び室内家具等の選定、購入に関するプランニングの請負契約が締結されたか否か。
(一) 原告の主張
(1) 被告は、インテリアデザイン設計業者である原告に対し、平成八年四月二四日までに、被告が提案したプランの内D案に基づくインテリアコーディネイト、すなわち、<1>被告自室のデザイン設計管理業務並びに<2>被告自室に配置する家具、インテリア等の選定及び購入業務を依頼し、原告はこれを請負った。
(2) 原告と被告は、平成八年四月二四日、右契約の報酬額決定の方法として、原告の料金体系上のプロジェクト報酬システムをとること、料率を二五パーセントとすること、すなわち、報酬額を被告自室の内装工事費及び家具等購入費用に二五パーセントを乗じた額とすることを合意した。
(二) 被告の主張
(1) 被告は、妻である典子が友人の友人である浩美に自宅の内装に関する相談をしたということなので、ついでに病院に作る自分用居室内の間取りや内装についての助言を浩美に求めたところ、良いアイデアがありそうだったので、これを前提とした具体的な間取りのデザインや家具、壁紙などの選定・コーディネイトをしてもらうことにして契約をすることも考えていたが、そのためには父親である亮平や長谷川工業も含めた打ち合わせをし、かつ、報酬額の取決めも含めて契約書作成により具体的な依頼内容・範囲などを決定するという手順になるものという認識でいた。しかし、アイディア提出の段階に留まり、依頼内容・依頼範囲及び報酬額の決定等をして契約締結に至る以前に、被告において浩美と契約することを取りやめた。なお、被告は、契約締結に至った段階でも、報酬額はインテリアにかかる費用(建築工事費は含まない)を基準として合意するものと考えていた。その前の段階は、個人的な相談もしくは契約締結前の相談、契約を締結するための打ち合わせにすぎない。
(2) 原告が主張する請負契約において、<1>浩美個人でなく、会社である原告が契約の当事者であるということはできない、<2>他方、本件のデザイン設計の対象となった建物の所有者及び工事請負契約の注文者は医療法人である那須中央病院でその代表者は亮平であるところ、被告個人が契約の当事者であるということはできない、<3>原告ないし浩美自身が、平成八年四月二四日ころには未だ、被告側の契約当事者が誰であるか認識が定まっていなかったから、右時点で契約が成立することはあり得ない。
2 原告はどの程度の仕事を完成したか
(一) 原告の主張
(1) デザイン設計
原告は、平成八年五月二日ころ、建築・インテリア計画書(甲一四・第二設計図書)を完成したが、右図書は、本件において、基本設計を具体化した実施設計として必要かつ十分な内容を有する。
なお、デザイン設計を実施に移すためには依頼者の了解が必要となるが、デザイン設計そのものは依頼者の了解を得るまで完成しないものではなく、常識的に一定水準を超える「創造的な空間」を計画書上作りあげた場合にはデザイン設計作業を履行したと言いうる。
(2) 家具の選定購入
原告は家具の選定について一任され、右一任に基づき妥当な家具を選定した。選定内容は、前記甲一四において特定されている。
(二) 被告の主張
(1) デザイン設計
原告が主張する甲一四によるデザイン設計は、契約以前に通常無料で行われるプレゼンテーションの段階にすぎなかった。
仮にそうでなかったとしても、甲一四によるデザイン設計は、基本設計の段階に至ったかどうかというようなものであり、少なくとも、実施設計、詳細設計の段階に達したものとは到底言えない。またそもそも、浩美は施主の代表者や工事関係者との打ち合わせすら経ておらずそれは那須において予定されていたのであるから、基本設計の段階どころかあるいは企画・立案の段階に留まるものとすらいうべきである。
(2) 家具の選定
原告が主張する甲一四による家具の選定は、関係者との検討・打ち合わせを経たものでなく、また、リストアップや価格の提示すら行われていない段階であり、案の提唱にすぎない。また、依頼者との協議や打ち合わせのない段階で家具選定の作業が終わったとは到底言えない。
3 原告の被った損害の有無および程度
(一) 原告の主張
(1) 平成八年五月一八日ころ、被告から原告に対して電話があり、被告は、原告の仕事を今やめて欲しいと繰り返し、契約の解消を口頭で申し入れた。これ以降被告から何の連絡もなく、原告は、被告から依頼された室内のインテリアデザインの設計と家具等の選定、購入等のプランニングの仕事を途中でやめざるを得なくなった。
(2) 原告は本件契約を被告により解約されなければ、請け負った仕事を完成させたことにより、総額三〇二万七五〇〇円を被告に対して請求することができた。すなわち、原告の料金体系表のうちのプロジェクト報酬システムを用いて次のように行った。原告の居室の予算は原告代表者が被告に聞いたところ一〇〇〇万円であり、家具等のインテリアの総額は原告の計算によると二一一万円であった。したがって、両者を足した一二一一万円が被告の居室の工事等にかかる費用の総見積額であったと考えられる。この額に原告の料金体系表記載の二五パーセントを乗じると三〇二万七五〇〇円となる。
したがって、三〇二万七五〇〇円は原告の損害となる。
(二) 被告の主張
(1) 平成七年五月一八日ころ被告は原告に仕事の依頼をしないことにした旨の連絡をしたが、これは契約をしないことを伝えたものであって、契約の解除ではない。
(2) 被告は原告代表者に対して被告居室の建築費は坪当たり六〇万円と話したが、これは建築物の構造体も含む総工費であり、本件の被告自室部分の面積は一六・七三坪であるから、これを乗ずると総工費は一〇〇三万八〇〇〇円となる。
しかしデザイン報酬の基礎となるのは、通常建築物の構造体を除き、また、内装工事(床・壁・天井)及び仕上げ材についても設計・デザインした範囲内のもの以外は除かれるものと考えられるから、基礎となる金額は、原告主張の一〇〇〇万円よりずっと低い金額である。
また、原告は家具の選定による家具購入費も報酬算定の基礎としているが、甲一四では家具の選定がなされているとはいえず、通常家具の選定は依頼者の了解を得て行うところ了解はなされていないから、家具の選定が業務として完了していたことを前提とする報酬額の選定はできない。
4 商法五一二条の適用の有無および相当報酬額
(一) 原告の主張
(1) 原告は、住宅等の内装、外装及びインテリアに関する企画・デザイン・設計並びに施工、住環境及びインテリアに関するカウンセリング等を業務内容とする有限会社である。
原告は、前記2のとおり、右営業の範囲内の行為として、被告のために、遅くとも平成八年五月一日までに被告自室のデザイン設計を、遅くとも同月一七日までに家具等の選定を、それぞれ完成した。
(2) 原告の右業務の履行に対する相当報酬額は、次のとおり、少なくとも二三八万八七五〇円である。
これは、原告が当時デザイン設計監理を請け負う場合の報酬基準として用いていた算式を基準として本件の相当報酬額を算出したものである。
すなわち、原告は、デザイン設計監理を請け負う場合の報酬基準につき、インテリア総コスト(内装工事、家具、照明、造作家具、衛生設備機器、窓、カーテン、カーペット、建具などの費用)に二五ないし五〇パーセントの料率をかけるという算式を定めていた。
他方、被告自室の実質部分の工事費予算は原告が被告に聞いたところ一〇〇〇万円であり、原告が選定した家具の購入費総額を算出すると二一一万円となり、両者を足した一二一一万円が被告自室のインテリア総コストであったと考えられる。
そして、原告は<1>被告自室のデザイン設計監理業務及び<2>右自室に配置する家具、インテリア等の選定及び購入を行おうとしていたものであるが、実際に原告がなした業務は、前記2(一)のとおり、<1>の内デザイン監理業務及び<2>の内家具等の購入を含まないものであるから、原告がなした業務を金銭的に評価すると、デザイン設計についてはインテリア総コスト中<1>分である一〇〇〇万円に前記料率中最低である二五パーセントとを乗じた額の八五パーセントたる二一二万五〇〇〇円、家具等の選定についてはインテリア総コスト中<2>分である二一一万円に同じく二五パーセントを乗じた額の五〇パーセントたる二六万三七五〇円が相当である。
(3) 右金額の基になった甲一号証に定める原告の報酬算定式は、業界の報酬規定あるいは第三者の定める報酬基準に照らして、デザイン設計監理業務の報酬基準として妥当なものである。
家具等の選定・購入に関して、その購入費用の二五パーセントないし五〇パーセントの報酬を支払うことになるが、右購入費用は業者の仕入れ価格であり、仕入れ価格は通常エンドユーザーへの小売価格の五〇ないし七五パーセントであるから、結局原告に報酬を支払っても通常の購入価額より安くあがることになり、右の報酬算定式は妥当なものである。
被告から解約申し入れを受けるまでに、原告が被告自室のデザイン設計業務として行った各作業に要した時間は合計八三時間に及び、専門家がこれだけの時間を費やして行った業務の対価として前記報酬額は相当な額である。なお、この所要時間に甲一号証で原告が定めるタイムチャージを乗じてこの時点までの時間制による報酬額を算出すると一五五万五〇〇〇円となる。
(二) 被告の主張
(1) 被告が本件において相手方と認識していたのは、浩美本人であり、会社である原告ではない。他方、浩美は、当初個人的関係において被告夫婦と対応し、その後の対応も有限会社代表者として行為していたか疑わしい。
このような場合、たまたま浩美本人が有限会社の代表者であるからといって、そのなした行為について商法五一二条の適用を肯定しそこに有償性を認めるとすれば、それは信義則に反し、本来商人間の信義を実現しようとする商行為法の理念に悖るものである。
したがって、商法五一二条はその商人としての行為であることが明白な状況下において行為がなされた場合に限り適用されるというべきである。
また、浩美の行った行為は、プレゼンテーションであり、契約の誘因にすぎないから、これをもって報酬を請求することはできない。
(2) 原告は、商法五一二条の適用による相当報酬額についても、甲一号証の料金体系表を基準とするが、右基準は他の基準と比較して普遍性を欠き、不当である。工事費を一〇〇〇万円とすることに対する被告の主張は前記3(二)(2) のとおりである。また、実作業時間による報酬額は、甲一号証のタイムチャージ自体が異常な高額であり基準とならない。
(3) 商法五一二条の相当報酬額は、<1>工事費を基準として相当報酬額を算定する場合、<2>人件費により算定する場合がある。本件では、<1>につき、原告がデザインをなしたであろう内装工事費部分の金額の特定が必要であるが、右金額の特定と立証はなされていない。また、<2>につき、日本デザイナー協会の「標準日額人件費」により本件における相当報酬額を試算すると、別紙のとおり二〇万七四〇〇円ないし三一万一一〇〇円である。
(4) 商法五一二条の相当報酬の支払義務者は、医療法人である那須中央病院であって、被告ではない。
商法五一二条による相当報酬の支払義務者は人の行為を受けた者、契約成立に至ったならば契約当事者となるはずであった者である。被告はデザイン設計のなされた居室を使う筈の者であったにすぎず、デザイン設計の提供を受けたり契約当事者になるべき筈の者でもない。
(5) 仮に被告に契約上の報酬の支払義務があり、または商法五一二条による相当報酬の支払義務があったとしても、原告と被告は、平成八年五月一八日ころ、被告が原告に対して支払うべき報酬額を三〇万円とする旨合意した。したがって、被告が支払うべき金員は金三〇万円の範囲内にとどまるものである。
第三争点に対する判断
一 原告と被告との間で、被告居室のデザイン設計および室内家具等の選定、購入に関するプランニングの請負契約が締結されたか否かについて
1 原告は、前記第二、三、1、(一)のとおり、平成八年四月二四日ころ、右請負契約を締結し、かつ、報酬額の決定方法につき合意した旨主張し、原告代表者はこれに沿う供述をする。
2(一) 前記第二、二認定の事実によれば、被告は、平成八年三月一三日ころ浩美に電話をかけ、浩美が送付した被告自室のデザイン設計のプランの内プランDが気にいったので右プランを詳しく書いたものを送って欲しいと言ったこと、浩美は、同年四月一二日ころ典子及び被告に対し、一般住宅用インテリアデザイン料金表(甲一)を送付し、右料金表には原告がデザイン設計等を行う場合の報酬額の決定方法が記載されていたこと、被告及び浩美は、同月二四日ころ、原告会社の事務所でもある、浩美の自宅を訪れ、被告自室のデザイン設計について浩美と話し、また、その際、浩美及び祐二が前記料金表を基に報酬額について説明したことが認められる。
(二) しかしながら、他方、前記第二、二認定の事実によれば、典子は当初友人であるオーエン靖子から、インテリアに詳しい友人として浩美を紹介され、その後浩美に対し被告自室のデザイン設計について相談するようになったこと、浩美が典子及び被告に対し本件料金表を送付した際、浩美は右料金表を送付する意味を示す説明をしていないこと、被告は同年五月一三日ころ及び同月一六日ころ浩美に電話をかけ、亮平が報酬がいくらになるか知りたいので早く出して欲しいと言っている旨、亮平が那須に来て欲しい、業者にも会って欲しいと言っている旨話し、実際に同年五月二三日浩美が那須に行く予定になっていたこと、浩美は、同月一六日の電話のころまで、被告の居室の工費につき知らず被告に問い合わせたこともないことが認められる。
また証拠(乙一、六、証人典子、原告代表者、被告本人)によれば、平成八年四月二四日ころまでの間、典子及び被告に対し、浩美は原告会社が同社の仕事としてデザイン設計を行う旨話したことはないこと、同日、祐二が本件料金表を示して報酬についての話がなされたが、その際被告の居室のデザイン設計等に関して、具体的な報酬額についてのやりとりも、報酬額の基礎となる金額についてのやりとりもなされなかったこと、被告及び典子は、同日のやりとりで初めて浩美が同人経営の会社の仕事として被告居室のデザイン設計を行おうとしていることを認識し、これを亮平に伝えたこと、被告及び典子は、亮平の了承のもとに原告と契約を締結しようと考え、その旨亮平に伝えたこと、同年四月二四日の以前においても以後においても、本件において原告ないし浩美の業務に関して被告との間で契約書が交わされたことはなく、また契約書が交わされようとしたこともなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
(三) 以上によれば、前記一、1の供述は採用できず、ほかに平成八年四月二四日の段階において、被告居室のデザイン設計及び室内家具等の選定、購入に関するプランニングの請負契約は締結されていたことを認めるに足りる証拠はない。
二 商法五一二条の適用の有無及び相当報酬額について
1 原告は、住宅等の内装、外装及びインテリアに関する企画・デザイン・設計並びに施工、住環境及びインテリアに関するカウンセリング等を業務内容とする有限会社であることは前記認定のとおりである。
そして、前記第二、二認定の事実によれば、原告は、右営業の範囲内の行為として、被告のために、平成八年五月一日までに被告自室のデザイン設計及び家具等の選定を行い、建築・インテリア計画書(甲一四。以下「第二設計図書」という。)を作成したものである。
したがって、原告は被告に対し、商法五一二条に基づき、右行為についての相当な報酬を請求することができるというべきである。
2(一) 被告は、前記第二、三、4、(二)、(1) のとおり、本件ではデザイン設計を行う主体が浩美個人か原告会社かが判然とせず右行為が商人としての行為であることが明白であったとはいえず、商法五一二条に基づく報酬請求権は発生しない旨主張する。
確かに、商法五一二条の適用があるためには「他人のために」行為をなすことが必要であり、客観的にみて原告が被告のためにする意思をもって行為をすることが必要である(最高裁判所昭和五〇・一二・二六民集二九巻一一号一八九〇頁参照)。そして、右の主観的意思の存在は、単なる内心的意思でなく、何らかの形で外部に認識されうることが必要であると解するべきである。
如上認定によれば、被告は平成八年四月二四日までの間は浩美個人が行為していると認識していたが、同日の会談後浩美が経営する会社である原告が営業行為として行為してきていることを認識し、これを容認したことが認められる。そうすると、平成八年四月二四日以降の行為については原告が被告のためになす行為であることが外部的に認識しうる状態であり、同日前の行為についても、被告はこれを容認したものであるから、その時点で被告のためになす行為であることが明らかになったものというべきである。
したがって、右被告の主張は採用できず、原告の行為は全体として被告のためになす行為であるから、原告は商法五一二条に基づき相当な報酬を請求することができるというべきである。
(二) 被告は、前記第二、三、4、(二)、(4) のとおり、商法五一二条の相当報酬の支払義務者は医療法人である那須中央病院であって被告ではない旨主張する。
確かに、証拠(乙一、六、被告本人)によれば、本件のデザイン設計の対象となった被告の居室は、那須中央病院が注文者でありかつ所有者である建物の一部であること、那須中央病院の代表者は亮平であって被告ではないことが認められ、右認定に反する証拠はない。
しかしながら、商法五一二条による報酬請求は、契約ないし委託がなくても、商人の行為が客観的にみて他人のためになすべき行為であった場合には、商人がその他人に対して報酬を請求できるとするものであるから、報酬を請求することができる相手方は必ずしも契約の当事者となるべき者でなく、実質的にみて商人の行為が向けられた者と解するのが相当である。
如上認定の事実によれば、本件において原告の行為が向けられた者は実質的にみて被告と認めるのが相当である。この点についての被告の主張は採用することができない。
3 そこで、相当な報酬額について検討する。
(一) 如上のとおり、本件は原告と被告との間に請負契約が締結されておらず報酬額の合意もなされていないから、本件における相当報酬額を判断するについては、デザイン業界の基準、当事者間に推認される合理的意思、業務の規模、内容、程度、等の諸事情を総合的に勘案して相当とされる額を定めるべきである。
原告は、商法五一二条に基づく相当報酬について、前記第二、三、4、(一)、(2) のとおり、本件料金体系表を基に報酬額を主張するが、右料金体系表は原告作成のものであり、本件は右料金体系表に基づく合意がないのであるから、原告の右主張は失当である。
(二)(1) 証拠(甲二六)及び弁論の全趣旨によれば、インテリアデザイン(インテリアコーディネイト)業務及び報酬について、社団法人インテリアデザイナー協会が平成七年一一月一日に作成した「インテリアデザインの業務及び報酬基準ガイドライン」(甲二六。以下「報酬基準」という。)があり、これは右協会が三〇年以上前から報酬基準を定めこれがインテリア業界において周知であること、原告、被告双方とも右基準を容認していることが認められる。
(2) 報酬基準によれば、業務内容及び報酬については次のとおり定められている。
I 設計監理業務について
(ア) インテリアデザインの設計監理業務は、<1>企画・立案、<2>基本設計、<3>実施設計、<4>詳細設計、<5>監理の順序によって行う。
(イ) 企画・立案とは、委託者の意図するものを調査整理し立案する段階であって、委託者の企画について十分協議し、必要な調査を行い、内容を充実し企画の新しさと適正化を図る。
(ウ) 基本設計とは、決定された企画を可視的な姿に表現する段階であって、構想を示すに適当なアイデアスケッチなどを提示し、材料・構造・仕上げ・工事概算額など必要な説明を口頭または文書で行い、デザインの大綱を決定する。
(エ) 実施設計とは、基本設計決定後その細部について調査検討し、基本設計の具体化を図り、積算を可能にする作業であって、主として次のような業務である。すなわち、<1>図面の作成(縮尺図による平面図・立面図・展開図などの他、必要に応じ断面図・透視図・構造図・家具図・仕上表などを作成する。)、<2>市販品の選定(計画に調和するインテリアエレメントを選定し、配置する。)、<3>色彩計画(色彩計画表、色表、材料見本表など、必要に応じて作成する。)、<4>仕様書の作成(材料、構造など、図示し得ない部分について明記する。)、<5>工事費概算書(上記図面及び仕様書によって積算した工事費の概算書を必要に応じて作成する。)。
(オ) 詳細設計とは、実施設計に従い、正確に工事ができるようにする段階であって、主として詳細図、原寸図、工作図など、必要に応じて作成する。
II 報酬及び諸費用について
インテリアデザインに関する報酬及び諸費用として、デザイン料(工事費による報酬料率制度)、デザイン料(人・日による報酬料率制度)、業務を中止した場合の報酬等につき、次のとおり定める。
(ア) デザイン料(工事費による報酬料率制度)
(い) 設計監理報酬額の算定はインテリア工事費に表1の料率を乗じた金額を基準とする。右の算出の基礎となる工事費は、通常建築物の構造体を除く、床・壁・天井の下地および仕上げ材、照明器具・家具・カーテン・敷物・装飾品などのインテリアエレメントおよびこれに関係する諸設備のうち、設計・デザインしたものまたは選定した範囲とする。ただし、既存のものを活用する場合は、その製作費相当額を含むものとする。
(ろ) 業務を分割する場合の算定方法としては報酬総額を基礎として次のとおりである。
基本設計のみを行う場合 五〇パーセント
基本設計及び実施設計を行う場合 八〇パーセント
実施設計のみを行う場合 五〇パーセント
監理を除く場合 八五パーセント
監理のみを行う場合 三〇パーセント
(は) 家具・カーテン・敷物・照明器具、装飾品などの選定・コーディネイションに対する報酬は、工事費による報酬料率制度(表1)によって算出した金額の五〇パーセントを基準とする。
(イ) デザイン料(人・日による報酬料率制度)
(い) 人・日による設計監理報酬額の算定は表2の類別及び工事額に該当する人・日(人工)の指数に日額人件費(表3)を掛け、経費および技術料を加えた金額を標準とする。
表2においても、インテリア工事費の区分に従い、人工の指数が定められている。
(ろ) 表3は標準日額人件費であり、大学卒業後の実務経験年数相当の能力のある者を六段階に分類して、それぞれ日額人件費を定めている。
(は) 報酬(C)は、業務人件費(P)、経費(E)、技術料(F)、特別経費(R)の合計であり、略式方法による報酬額の算定方法として、主として業務人件費と特別経費から算出する方法としてA案からE案が示されている。
右略式方法の内、業務人件費と特別経費のみから算出するものとしては、C案がPの二・五倍とRの和、D案がPの二倍、E案がPの二倍とRの和となっている。
(に) 算定の基礎となる人・日による標準報酬は、通常建築物の構造体を除く、床、壁、天井の下地および仕上げ材、照明器具・家具・カーテン・敷物・装飾品などのインテリアエレメントおよびこれに関係する諸設備のうち、設計・デザインまたは選定した範囲とする。ただし、既存のものを活用する場合は、その製作費相当額を含むものとする。
(ウ) 業務を中止した場合の報酬につき、委託者は受託者がすでに着手した部分に相当する報酬を支払わなければならない。
(三)(1) 右認定の事実によれば、工事費による報酬料率表においても、人・日による報酬料率表においても、インテリア工事費を確定することが必要であり、かつ、右インテリア工事費は、通常建築物の構造体を除く、床、壁、天井の下地および仕上げ材、照明器具・家具・カーテン・敷物・装飾品などのインテリアエレメントおよびこれに関係する諸設備のうち、設計・デザインしたものまたは選定した範囲とする(ただし既存のものを活用する場合は、その製作費相当額を含む)ものである。
原告代表者は、本人尋問及び陳述書において、右の意味のインテリア工事費(以下「本件インテリア工事費」という。)について、平成八年五月一三日及び同月一六日ころ、被告と電話で話した際被告は被告居室部分の工事費について坪八〇万円として一〇〇〇万円であると言った、被告居室部分は一六・七三坪であるから坪八〇万円で計算すると一三三八万円となるところ、一〇〇〇万円はその七五パーセントとなることから、右一〇〇〇万円が本件インテリア工事費であると理解した旨供述する。
しかしながら、被告は、本人尋問及び陳述書において、この点につき、坪六〇万円であるとは言ったが(この場合坪数を掛けると約一〇〇三万円になる。)、これは本件インテリア工事費でなく建物の構造体を含む総工事費である旨供述していること並びにインテリア工事費が総工事費の七五パーセントとなることについて合理的根拠はないことに照らすと、前記原告代表者の供述は容易に信用することができない。また、如上認定の事実によれば、本件インテリア工事費を確定する場合には、原告において、設計・デザインしたものまたは選定した範囲を確定することが必要であるところ、平成八年五月一三日ないし同月一六日の段階では、未だこの点が確定していたと言うことはできない。
そうすると、本件インテリア工事費について、これを確定するに足りる証拠はないと言うべきである。もっとも、前記被告本人の供述及び被告は内装費について結局五、六〇〇万円かかったと聞いている旨供述していること並びに弁論の全趣旨によれば被告は本件インテリア工事費が五〇〇万円である限度でこれを肯定していると認められることを総合すると、本件インテリア工事費を五〇〇万円として検討をすすめるのが相当である。
(2) 右工事費を前提として、工事費による報酬料率表による報酬額及び人・日による標準報酬額について検討する。
(ア) 前記認定の原告作成にかかる第二設計図書の内容を、報酬基準における設計監理業務の内容に照らして検討すると、原告において、インテリア設計監理業務の内、基本設計をなしたが実施設計は<3>色彩計画及び<5>工事費概算書を残し、<1>図面の作成、<2>市販品の選定、<4>仕様書の作成について提案はなされているが未だこれらが十分具体化している状態に至っていないものと認めることができ、これらの事情を勘案すると、原告のした設計業務は基本設計の段階及び実施設計の一部に留まるものと認めるのが相当である。
すると、工事費による報酬料率表による原告がした設計業務に対する報酬は、本件インテリア工事費五〇〇万円に対する基本設計の報酬額として、五〇〇万円×〇・五×〇・二四(被告居室は前記表1の種別で第五類に該当するので第五類の比率)=六〇万円(基本設計のみの場合)から五〇〇万円×〇・八×〇・二四=九六万円の間の額となる。
(イ) 前記認定の事実によれば、原告において実際にデザイン設計を行ったのは浩美であり、浩美のデザイン設計の実務経験は三年未満である。そして、本件において、特別経費(R)がないことは当事者間に争いがない。
すると、人・日による報酬料率表による原告がした設計業務に対する報酬は、本件インテリア工事費五〇〇万円に対応する人工の指数一五・〇、日額人件費二万円(アシスタントデザイナー)として、二万円×一五・〇×二=六〇万円(略算方式E案)から二万円×一五・〇×二・五=七五万円(略算方式C案)の間の額となる。
なお、原告は、本件において浩美が業務をなすために費やした時間をもって一五五万円と算出される旨主張するが(甲三〇)、問題の報酬は一般的な相当報酬額であること、右時間を認めるに足りる客観的証拠はないことに照らすと右主張は採用できない。
(ウ) 以上の事情及び前記認定の原告がなした業務の内容、特に実施設計の程度・内容等に照らすと、原告の相当報酬額は、金七〇万円と認めるのが相当である。
(四)(1) 被告は、前記第二、三、4、(二)、(5) のとおり、原告は被告との間で平成八年五月一八日ころ報酬額を三〇万円とした旨主張する。
(2) 前記第二、二認定の事実によれば、確かにそのころ被告は原告に対して報酬として金三〇万円を請求する請求書を送付し、同月二〇日ころ被告に到達したものであり、証拠(甲二七の一)によれば、右請求書には一部を請求する旨の限定はないことが認められる。
(3) しかしながら、証拠(乙五、六、原告代表者、被告本人)によれば、<1>平成八年五月一六日ころ、原告代表者は被告に対して、一〇〇万円の報酬を要求したところ、被告はこれを拒否し、三〇万円でも高いと言ったこと、<2>原告代表者は、これを聞き三〇万円であれば支払が受けられると思って右請求書を送付したこと、<3>その後、同年九月四日ころ、原告は代理人を通じて被告に対し、対価として一五五万五〇〇〇円及び損害賠償として一九六万五〇〇〇円を請求したことが認められ、以上の事実に照らすと、前記(2) 認定の事実をもって、直ちに原告と被告が報酬額について三〇万円と合意したことを認めるに足りず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
三 結論
以上によれば、原告の主位的請求は理由がなく、予備的請求は金七〇万円の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 草野真人)